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掃除を終えて、午後の授業が終わってから、弥子は児童会室に来ていた。
「三十分で探し出さないと!」
児童会室に所狭しと置いてある棚をひっくり返す勢いで、弥子は奔走していた。
「児童会室に資料あるって、この量どうやって探せば……えっと…終業式だから…夏休み関連か……季節行事か……」
弥子は探し回るが、ふと時計を見ると三十分経っていた。
「ああ! 明日朝来て探そう!」
児童会室から飛び出して、そのまま階段を駆け下りる。靴箱でこけそうになりながら靴を履き替えて、家まで急いで帰った。
「た、ただいま!」
「遅い! 塾の時間ギリギリよ!」
「ごめんなさい! 児童会の仕事が!」
「お母さんは児童会も塾もきちんと両立してたわよ! 早く支度しなさい!!」
弥子は怒鳴り散らされながら自分の部屋に入り、ランドセルを置いて、塾の荷物を確認した。
そして、すぐに階段を駆け下りて、玄関に向かう。そこにはすでに、車のキーを手で弄びながら立っている母親。
「行くわよ。忘れ物ないわね」
車に乗り込んで、隣町の大きなビルに入る。
「ああ、武門さん!」
入ってすぐにひょろい男性が話しかけてきた。
「先生。本日もよろしくお願いします」
母親は丁寧に挨拶をするが、
「少しお時間いいですか? 五分ほどです」
塾教師にそういわれて、奥の応接室に消えていった。
「………」
それを見ていた弥子は顔から血の気が引いていた。
「……この前のテストだ……あまりよくないし……」
塾の教室に入って、一人席に着く弥子。必要なものを机に出しても落ち着かない。
「……今日は帰ったら、宿題して、表紙描いて…朝は早めに行って探さないとだから、いつもより早く起きて…」
『言いたいことははっきり言わないと』
そこで、昼に未来に言われたことを思い出した。
「…はっきり言ったところでさ…それが通るとも思えないんだよ」
弥子のつぶやきはため息とともに消えた。
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