「ヒトリニシテ」

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「早くない? また美化委員の担当代わったの?」 「いや、早い時間に行く武門が、施設の入り口から見えたから。大方昨日先生に言われてた資料でも探してるんだろうなって思って。手伝うよ、終業式の資料でしょ?」 「い、いいよ! 悪いから!」 「……顔色があんまりよくない奴に遠慮されてもね」 「え……」  未来の言葉に弥子は顔を押さえる。 「俺の下の子、結構病弱な奴いるんだよ。大地(りく)とか希星(あかり)とかな。人の体調の変化には聡いと思うけど」 「………」 「それに今日一斉下校の日で、一緒に帰るでしょ? 愛夢(あいむ)がすげぇ楽しみにしてんだよ、武門と帰るの」 「見つからなかったら。放課後探そうと思ってて……」 「だから、手伝うよ。愛夢、機嫌悪くしたら寝るまで悪いから、勘弁して。どこ探した?」 「えっと…ありがとう、そこの方は探したから、あるとしたら、あそこかここ」 「じゃあ、あっち探すよ」  そのまま予鈴がなるまで二人は探していたが、結局は見つからなかった。  
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