飽くなき欲望の彼方へ

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「ここは一つ『たこ焼き』推しで!」 「それ以外は却下」  ……やっぱりか、と北山は頭を抱えた。 「いや、三組も『たこ焼き』推しだって聞いたけど。それに一応第三候補までは書かないと」 「そこはアレやろ。気合いの違いを見せたらなあかんのちゃうか?」 「そうや、俺らの方がたこ焼きを愛してるという気合いをなあ!」  クラス中のメラメラとした闘志が、壇上の北山をジリジリと照らす。 (いけない……みんな目が血走っている……!)  北山は一抹の不安と恐怖を感じた。  そんな訳で、第三候補まですべて『たこ焼き屋』と言う文字で埋め尽くされた書類を、北山は仕方なくそのまま生徒会へと提出した。  普通なら却下されるだろう……いや、怒られるかも。なので、念の為陳情も付け足しておいた。  その熱意が伝わったのかどうかは分からないが、二年二組の文化祭の出し物は、見事『たこ焼き屋』に決定したのである。 「命拾いをした」北山は後にそう語ったと言う。
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