飽くなき欲望の彼方へ

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 次のHR。  文化祭での模擬店の出し物が『たこ焼き屋』に決まった二年二組は、皆自主的に動き出していた。  当たり前だが、高校の文化祭で配られる経費などはたかが知れている。  いかにしてコストダウンを計るかだが…… 「まずは材料やなー」 「必要な物は取り合えず、小麦粉ぉ、卵ぉ、出汁ぃ、揚げ玉ぁ、山芋ぉ、葱ぃ、タコ! あとソースにかつ節に青のり、そんでマヨネーズぅ……てとこかなっ?」 「ソースやなくて醤油に出来るとかは? チーズとか紅ショウガなんかのそう言うオプションも有り?」 「それは予算次第ちゃうか? それか、各自で持ち寄るかやな」 (うーん……何てラクなんだ。学級長が何もしなくても、トントン拍子に作業が進んでいく)  はっきり言って自分の出る幕など全くない。  北山はそんな頼もしいクラスメイトを、教室の端でただ静かに見守っていた。 「タコはやっぱり明石のタコやんな」 「いや、タコにはこだわりたいけど高いでぇ? そこは妥協ちゃうか?」 「たこ焼き器は誰が持って来る? 当然みんな持ってるとは思うけど」 「そうやなぁ、どうせやったら焼きにもこだわりたいもんなぁ」 (な……ちょっと待て! 当然みんな持っているだと? たこ焼き器をか!?)  大阪人は、一家に一台は必ずたこ焼き器を常備している。  それが常識と言っても過言ではない。
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