飽くなき欲望の彼方へ

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(みんな視点が鋭い……プロか? 君達はプロなのか?)  そんな北山は、実は大阪出身ではない。  この高校には入学当初からいるが、中学までは東京に住んでおり、高校進学を機に父の仕事の赴任先である大阪に引っ越して来たのだ。 (噂には聞いていたが、大阪人のたこ焼き魂……予想以上に熱い)  今正に、北山は府民性の違いという物をまざまざと見せつけられていた。 「焼きにこだわるならやっぱ銅板のたこ焼き器やろ。熱がまんべんなく均一に伝わるからみんな同じ具合に焼けるし、通常の三倍のスピードで焼けるで。うちにあるけど、それ使う?」 「なんやと、まさかあのアメ村『賢者』も使ってると言うヤツか?」 「うっわー、あそこの最高やねん! 外はサクッ! 中はふわトロッ!」 「でもあれや、銅板は焼けんのが早いだけに扱いが難しいねん。前もってちゃんとラードで焼き付けもしとかんと、くっ付いて上手く焼けへんし。傷つきやすいからピックやなくて竹串使わなあかんしで」 「うーん、これは特訓が必要やな……」  話がどんどんと立て込んで来ている。  ぽつん、と委員長である北山は完全に蚊帳の外だった。 (分からん……たこ焼き器の違いや焼き方にまで話が発展している。ディープだ……) 「そうや委員長! 火は使ってもええんかな? 銅板は火力が命やねんけど」  突然話を振られて、北山はいささか慌てた。 「ああ、まあそれは。一応カセットコンロなら大丈夫だけど」  北山と南方が代表で消防の安全講習を受けて来たので、それなら使う事が出来る。 「よっしゃー!」  教室内に喜びの雄叫びが響く。みんな本当に楽しそうだ。  たこ焼きという出し物一つで、人間はここまで団結出来る物なのだろうか。
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