食い逃げ屋

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「んで話って何ですか?」  同僚に誘われて飲食店に来ていた僕は、カウンターしかない店内の一番奥に座った。すぐ横にレジがあり、壁には星の数ほどのメニューが書いてある。奥では店長らしきものが1人でフライパンを振っていた。 「いやー、あっついねぇ…」  ネクタイを緩めながら、同僚はコップに注がれた水を一気に飲み干した。ネクタイを強く締めすぎたのか、首には痕がついていた。 「あの…」 「あー!悪い悪い、ここに誘ったのは訳があってな」 「話って、この店の事ですか?」 「そうそう、聞いて驚け、この店はなぁ……」  同僚が次の言葉を発する前に、店内に客が入ってきた。 「らっしゃーーい!」 厨房の奥から聞こえる店長の威勢がいい声、客はドアに一番近い席に座った。 「お、ちょうどいいや、あいつ多分やるぞ…」 声をずいぶんと抑える同僚 「やるぞって何を…」 「食い逃げだよ…この店は食い逃げokな店なのさ」
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