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慌てて同僚を見る。
「なっ、言ったろ」
口をもごもごさせながら、ドア側を指差した。
「な!じゃあないだろ!捕まえなきゃ!店長食い逃げだ!」
注文した物の代金だけ置き、店をでようとすると、店長が僕の肩を掴んだ。
「お客さん、いいんですよ……」
「そんな……また来たらどうするんですか!大体…」
すると店長はにっこりと笑った。
「いいんですよ…僕の仕事はお腹いっぱいになって、笑顔で帰ってもらう、それだけでいいんです…」
「嘘だろ……」
呆気にとられた僕は力なくカウンターに戻った。
「だから言ったろ?ここは食い逃げ公認なんだよ」
「ありえない……」
「ほんと、天国みたいな店だよここは」
僕は火照った体を冷ますために水を一口飲んだ。
「あとは…ここが地獄じゃなけりゃなぁ……何で自殺なんかしたんだろ…」
窓の外で流れている溶岩を、虚ろげな目で同僚は眺めた。
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