Gの轆轤

2/3
前へ
/64ページ
次へ
 夕焼け空が帰りだす頃、裏庭にある轆轤(ろくろ)は勝手にまわりだす、誰もいないはずなのに……  僕の爺ちゃんは去年死んだ。焼き物が好きで大体いつもこの時間に、あの轆轤より少し高めの台座に座って、焼き物を作っていたと、確か父は言っていたような気がする。  それが今目の前で回っている。  「父さん!、裏庭の丸い円盤が勝手に回って!」 父はテレビに夢中だった、ちょうどオリンピックの時期というのもあって、最近はテレビの前から離れない。 「んー?吉彦が来たんだろー?ほっとけほっとけー」 父はじいちゃんの事をいつも呼び捨てにしていた。でも何でこの事を知ってるんだろう。  その夜僕はこのことを詳しく聞いてみる事にした。  「父さん……何であの事知ってるの?…」 「あぁ、あれか、ちょうど吉彦が死んでから1ヶ月ぐらいたった時、おふくろが慌てて倉庫から引っ張り出してきて、帰ってきてる!帰ってきてるーってな!……最初はボケちまったのかと思ったけどなぁ…今じゃあれが当たり前だ…」 「じゃあ爺ちゃんはまだあそこにいるんだね!」 「さぁな……お!4回転!すっげぇー!」 父はまたテレビのほうに向き直ると、こちらの事などお構い無しだ。明日また見に行ってみよう、そのときは…
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加