ソレイユの便り

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 寺を出た頃には空はすっかり雲に覆われていた。気温が上がって出来た入道雲があっという間に広がり、辺りは薄暗くジメッとした空気が蔓延している。 「雨降りそうだよ」  僕はそう口にしながら、開いた両手を下に向けて揺らした。  『お化けが出そうだ』と勘違いされてないかとおじさんの顔を覗く。  すると、おじさんは空を指し、僕と同じようなジェスチャーをした。  長い坂を下っている途中、遠くの方でゴロゴロという音が聞こえた。稲光はなく、ただ音だけが鳴る。  当然、おじさんは気づいていない。そのことをどう表現すればいいのかを考えているうちに、頭上が光った。  「ゴロゴロゴロ......」  空は不機嫌そうに低い音で唸る。まるで機嫌が悪い時の母のような。  おじさんも見上げて、僕に目を合わせると家がある方を指差した。  『急ごう』という意味だと僕は思った。というのも、その後すぐにおじさんの歩く速さが増したからだ。  家まであと50メートル程に迫った時、大粒の雫が空から降ってきた。  それはボツボツという音を立てて地面に落ちたかと思うと、数秒のうちに矢のような勢いに変わった。 「うわっ!」  僕が走り出すとおじさんも家を目掛けて走った。  これが徒競走だったら、ベストタイムが出ただろう、と思うくらいに駆け抜けて家の中に入った。 「ああ、友保。よかった。由紀夫も......元気そうね」
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