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良男は毎回気付かれずに襲えたと思い込んでいたが実際は読子の掌の上である。彼氏がいなくなって自分の発情癖に気付き、性欲の暴走に困っていたのもあって読子はペット代わりに彼を利用していたのだ。
良男も自分を都合の良いはけ口代わりに思っていたようなので相子だと読子はずっと黙っていた。
もし彼の目的がそれならば、最近たまり気味なのと過去の清算もかねて相手をしてあげるのもやぶさかではない。だが、彼の纏う空気はそんなチャチな悪戯を企んでいるのとは違うと読子に教えてくる。
最悪の事態を考えて子供達は既に帰らせている。さて、何が出るかと読子は睨んだ。
「企むって……俺はただ久々の再開を……」
「いくら良男くんが非常識だと言ってもね、昔のキミとは見違えるほどにどす黒いオーラをしているわよ。もしかして、私を酔わせてその隙にお金でも盗もうとしたんじゃないかしら?」
「なんだよ急に!」
「だったらこれは何」
読子はバンと机の上に一枚の紙を出した。
それはノガミ大学からの連絡書で、良男が博打で大きな借金をして行方を眩ませたという知らせだった。
読子は大学時代の良男にとって保護者のようなモノだった事もあり、学校がそれを知らせてきたわけだ。
「アナタのような根無し草には到底返せない借金ね。だからアナタが今生の別れのつもりで尋ねてきたのなら、今夜だけはアナタの相手をしてあげる。だけど───」
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