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良男は読子が死んだと思い立ち上がる。
そして戸棚にある金庫の鍵を持ち出して、先程入れたお金とその他のお金を持ち去らんと金庫を開ける。
その扉を狂気の笑みで開けた良男はこの世を去った。
「これって」
翌日、学食に集まっていた葵ら人魚書店のバイト達はテレビのニュースに驚いていた。
なにせ昨夜の男が死体になって発見されたからだ。
現場はノガミ大学近くのビルのふもとで、テレビでは借金を苦に自殺したのだろうと報道していた。
「あの人……死ぬ前に店長に会いに来たのかな」
真相を知らない葵たちはそんな風に良男の死を美化するのも不思議ではなかった。
GWでの滞在期間はわからないとはいえ良男が咎人殺しに処刑された頃、しこたま殴られて気絶していた読子は目を覚ました。
普通なら死んでいるほどの怪我だが彼女の体は人ではなく願望機である。只人ならざる身である恩恵で数分間気を失っただけで傷もすっかり治っていた。
畳の染みも体を治す際に血を回収したようで残っていない。残されたのは最後まで良男を見捨てきれなかった引きこもりの淑女一人である。
「正直に言ってくれれば協力してあげたのに」
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