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本屋さんとチャラ男
閉店間際の本屋さんに怪しげな男が入っていく。
茶髪に染めて夜中だというのにサングラスをかけているその男はどこか不審だった。
店に入るなり奥に進むと、レジの精算をしていた店主に男は話しかける。
「よっす!」
「あら、良男くんじゃない。珍しいわね」
その様子を脇目に見ていたバイトの子らは男を白眼視したが、知人らしいとわかると警戒を解く。逆に言うなら初対面の彼らが警戒するほどに良男の纏う雰囲気はおかしかった。
そしてそれは読子とて気付いているが、口には出さないでいた。
「たまたま近くに来たんすよ。そろそろメシの時間だし、ご一緒しましょうよ」
「残念ね。今日はろくなモノがないわよ」
この茶渡良男は十数年前にこの店で働いていた元店員である。
当時の彼は遊びほうけて授業もサボりがちの不良生徒である。博打狂いで仕送りやバイト代を使い果たし、読子の晩酌にたかることも多かった。
彼が大学を辞めて以来の再会ではあるが彼が言う御一緒とは当然、読子の夕飯を恵んでもらうことに他ならない。
「ま、有り合わせで良ければ作ってあげますわよ」
「よっし。助かりますよ」
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