第4章

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 ふふっ、怖いの?  でも、大丈夫だよ。  雅人は手の中のモノを男に向かって振り下ろした。  ガツン、と鈍い音がした。  どうして怖がるの?   さんざん僕をいたぶってきたくせに。  雅人が睨みつけると、男も同じように睨みつけてくる。  怒っている?   従順な飼い犬だと思っていた僕が刃向かうから?  ふふっ、と笑い声がする。  男は笑っていた。  どうして?  どうして笑う?  雅人は困惑する。  闇雲に手にしたモノを突きたてる。  ピシッ、と音がした、と思ったら、ガチャン、となにかが大きな音をたてて壊れた。    男の顔だ。  壊れていくのは。  ふふっ。    雅人は笑う。  視界いっぱいに赤い色が大輪の花が開くように広がっていく。  綺麗な赤色──。    意識が遠くなっていく。  それは、あの時の感覚に少し似ている。  けれども、真っ白ではなく、真っ赤なのだ。  どくどくと湧き出すあたたかな赤い泉。  くっく、という男の機械的な笑い声。  雅人は眉を顰める。  嘘だ。男は壊れて、もういない。  僕が、この手で壊したのだから。  笑い声は、雅人の内側から聞こえてくる。  違う、違う──。  けれども、もうなにも考えることができない。  すべてが赤い闇に飲み込まれてしまったから──。 (この続きは書籍版でお楽しみください)
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