第3章

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 さっき買い物に出たときに買ってきておいてよかった、そう思いながら雅人は新しい紅茶の缶を開けた。  沸騰する寸前でスイッチを止める。あらかじめ紅茶の葉を入れておいたガラスポットに沸きたての湯を注ぎ入れた。  そうして箱からケーキを取り出し、切り分ける。  光希はチーズケーキのホールをいつも半分ぺろりと食べてしまう。雅人は六分の一を切り分け、残りは貴之のために取っておいた。 「お茶の用意ができたよ」  まだ窓に貼りついている光希に声をかけた。 「はあい」  光希は振り返ると、にこにこしながら雅人の元に走り寄ってきた。 「そうだ」  ソファーに光希と並んで座ってケーキを食べながら、雅人はバッグから今日買ったばかりの携帯電話を取り出した。 「携帯を新しくしたんだ。番号を教えておくよ」  雅人の前の携帯は壊してしまったから、改めて光希と電話番号を登録し合う。 「ねえ、パパ。僕のバッグに携帯ゲームあったでしょ? どこ?」  と、視線をキョロキョロと巡らせた。 「先に宿題をやってからだよ」  雅人は、食べ終えたローテーブルの食器をお盆に乗せて立ち上がった。 「はあい」  素直に光希は教科書とノートをテーブルの上に広げた。  携帯ゲームは、確かまだバッグの中に入れたままだった、と思い出す。  30分ほど経った頃、 「できた」  光希はパタンとノートを閉じた。 「ねえ、ゲームしてもいい?」  雅人のほうを振り向く。 「ああ」と頷くと、 「やったあ」  小躍りしそうな勢いで立ち上がった。 「ねえ、どこ?」  雅人は、光希を自分たちで使うようにと言われたゲストルームへ連れて行く。  クローゼットに入れていたバッグを取り出すと、光希に渡す。  それから部屋のベッドを指さし、 「夜はここで寝るんだ。パパと一緒だけどいいよね」  と、ダブルほどの広さのあるベッドを指さした。 「ええー、やだなあ」  光希はぶうたれる。無理もない。  普通に高校生男子は父親と同じベッドで寝たがらないものだ。しかし、今は非常時だ。 「しかたないよ。ここに世話になっている間だけは我慢して」  雅人の言葉が耳に入ったのか入らないのか光希はバッグからゲームを取り出すともうベッドのことは忘れたように、早速リビングのソファーに座り込みゲームに熱中し始めた。
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