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一息にまくしたてて、今度は僕が肩を弾ませる。
未希はぱちくりと何度か瞬きをしてから、思い出したように僕の頬に手を添えて、
叩いた。それはもう、いい音がした。
「……うるさい」
「うるさいって」
よりにもよって返す言葉はそれなのかと、問い質そうとした口を、塞がれた。
数秒の後に顔を離すと、未希はその柔らかい唇に指を当てて、
「絶対に、見せてよね」
真っ赤に腫れた目で強がるお姫様に、僕はうやうやしく頭を下げた。
チャイムが鳴る。終業式も終わり、この瞬間からが夏休みだとばかりに教室が騒がしくなる。窓から射し込む日差しは容赦がないが、クーラーが利いているおかげで室内は快適だった。
どこに遊びに行こうかなんて話し合っている中に気になる物を見つけて、クラスメートの席に近づいた。
「夜に公園でやろうって話になってさー。え、欲しいの? しょうがないなー」
彼は机の上に置いてあった花火の詰め合わせを開封する。夏になるとスーパーなんかで置いてあるやつだ。
「いいの、そんな地味なので。男なら派手なやつ持ってけよ」
彼の申し出を断って、線香花火を二本だけ受け取る。
多分、これくらい静かな方が、ちょうどいいだろうから。
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