前嶋優の邂逅

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 俺みたいな反応は慣れているのか、二人ともいつもの無表情、もとい、静かな目をしていた。独特の雰囲気の子たちだ。二人揃うと凄みが増す気がする。  きちんと挨拶してくれたのだからと、改めて姿勢を正した。 「ご丁寧にありがとうございます。前嶋です。こちらこそ、お兄さんにはお世話になってます」  立派な挨拶をしてくれたのに、やり返されたら少し照れたようで妹さんは右京ちゃんの半歩後ろに隠れてしまった。ついこの間まで中学生だった女の子の初々しい反応に顔が緩む。  兄弟の友達や知り合いに紹介された時の気恥ずかしさってのはちょっと特別だ。くすぐったくて、どんな顔をしたらいいのかわからない気持ちは覚えがある。 「右京ちゃんに妹さんがいたのは知らなかったから驚いちゃったけど、会えて嬉しいわ。今日はこれから放課後デート?」 「いえ。彩月もモデルに誘おうかなと」  軽い世間話に返ってきたのは想定外の答えで、妹さんと瞬きがシンクロしてしまった。初対面なのに気が合うね、仲良くなれそう。  て、そうじゃなくて。 「えっ、いいの?ホントに?右京ちゃん、なんて出来た後輩なの……?」 「モデル?結月、何の話?」     
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