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悩みというほど大層なものじゃないけど、もやもやが溜まってる時は単純作業が捗る。捗り過ぎて色々作り過ぎちゃって処理に困ったりもするけど、今は文化祭の準備っていう名目でやり放題だった。
家庭科室に近いこの空き教室は我が瀬良高校手芸部の部室で、今までの作品や布や道具で溢れている。整理はしているけど、今は文化祭用に作ったものとか作ってるものとか使えそうだと奥から引っ張り出したもので大分乱雑になっていた。
手芸部と言っても、三年は幽霊部員が数人、二年は俺と梅子ちゃん、一年は右京ちゃんだけだ。実動三人なので、正直廃部の危機である。同好会に降格は免れなくても、廃部は阻止したい俺らにとって、文化祭は受験を考えている中学生へのアピールにもなる重要な催しだったりする。
文化祭は九月の半ば。ゴールデンウィーク明けに決まった手芸部の出し物は、シュシュやペンケースみたいな簡単な作品の販売とファッションショーだ。時間はあるようでない。
ワタシの高校生活、がコンセプトで、校則に触れない程度に制服を着崩したり、一点ものの小物で自分らしさを演出、みたいなショーにしよう、と発案者の梅子ちゃんはそれは立派なプレゼンをしてくれた。
「文化祭まで……あと四ヶ月くらい?ですけど、この調子で作ったらこの部屋埋まりませんか?」
「さすがに、それはないと思うけど」
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