前嶋優の邂逅

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 右京ちゃんは裁縫とか始めたばかりだから小物だけだけど、俺と梅子ちゃんは一から服も作る予定だ。小物ばかり量産している俺とは対称的に、梅子ちゃんの前には服のデザイン画が何点も並んでいる。使いたい布の候補もだいぶ絞り込んでいるみたいで、作業の進捗には既に差ができていた。  今着てるカーディガンはちょうどいいサイズがないからって自分で編んだものだし、服を作るのはそんなにしんどくないと思うんだけど、問題は別にあった。 「モデル、まだ見つからないんですか?」 「う、ん……」 「優ちゃん、友達は多いのにね」 「……ステージで隣歩くとか、腰の位置比べて絶望するから絶対イヤって」  理由を聞いた時は泣くかと思った。そんな理由?って。確かに俺デカイ方だけど。今年の身体測定で晴れて百八十センチオーバーしたけど。隣歩きたくないって言われたのは流石にショックだった。  小物とか制服アレンジの方を引き受けてくれた子は結構いるのに、採寸して服作るよ、ステージで隣歩いてって言ったら誰もやってくれない。俺が築いた友情なんてそんなもんだったらしい。 「梅子ちゃんは桜子ちゃんに頼むの?」 「ええ。あと幼馴染に」 「ああ、睦月くんね」  桜子ちゃんは、梅子ちゃんの双子の妹さんで美術部だ。一年の時は俺のクラスメイトだった。 二人は大分タイプが違う。よく似てるけど、見分けられないなんてことはない。     
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