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怪しまれるのを覚悟してマスクでもすれば良かったのか、イヤ、してもしなくても結局奇異の目で見られることは変わんないと諦めた。隣に右京ちゃんがいてくれて俺は精神的に大変助かっているけど、右京ちゃんにしてみればトバッチリだ。せっかく付き合ってくれたのに、可哀想なことをした。
頻繁にメールの受信フォルダをチェックするけど、返信はない。時には携帯すらしない幼なじみのスマホへの無関心具合は現代女子高生としてどうなんだと、こんな時だけ小言を言いたくなった。
「結月、お待たせ」
「彩月、おかえり」
俺にじゃなく、右京ちゃんに声がかけられてスマホから視線を上げると、右京ちゃんが女装したのかと思うくらいに表情も雰囲気も瓜二つの女の子がいた。メガネもお揃いで、違うのは髪の長さくらいだ。
「……ドッペルさん?分身の術?」
「妹です」
何度も見比べて、自分でも間抜けだと思う感想を漏らしたら言われてみれば納得の答えが返ってきた。す、と女の子が一歩前に出で頭を下げる。
「はじめまして。結月の双子の妹の彩月です。兄がいつもお世話になっています。先輩のお噂はかねがね」
流石に女の子の声で、右京ちゃんよりも少し長い髪の頭を下げて丁寧に挨拶してくれる。この頭頂部の角度は見覚えがある。右京ちゃんが入部する時に見たヤツだ。
「……双子って、こんなに似るのねぇ」
俺の中の双子のイメージが音を立てて崩れて再建されていく。だって梅子ちゃんたちそっくりだけど全然違うんだもん。
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