特定者の監視

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 それに断罪行為をやる人が年々減少しているともSNSで言われているので、どうやらこの仕事には意味があるらしい。だからこのバイトを続けていく上でこれ以上の詮索はしないでおこうと思う。  今まで自分もSNSをやってきて、稀にではあるが悪人を咎めるようなつぶやきをした事もあった。 でもこのバイトを始めてからはそういうのを一切やめた。思ったことがあったのだ。 罪を犯すヤツは悪人だが、そいつらを晒しているヤツらも一歩間違えたら悪人なのかもしれないと。  だって考えてもみてほしい。その悪行をした人物は必ずしも本人とは限らないのだ。例えば誰かがなりすましでつぶやいてるかもしれないし、誰かに苛められてやってもいないし考えてもいないことをつぶやかされたり、やってる風に見せかけられたりしているもしれない。 まぁ多くのものはそうではないだろう。でも万が一そのような事があったら?何もやってない善人が住所を晒され、痛い目にあっているかもしれないのだとしたら? それはとても恐ろしい話だ。晒した側の人間は個人情報保護法違反だし、罪に問われることもあるかもしれない。  「断罪なんてのは警察や裁判所の公的機関に任せればいいのだ。そこに個人が介入する必要なんて一切ない。」  というのが僕のまだ見ぬ雇い主が労働条件以外で唯一、メールで送ってきた思想だ。それが正しいのか間違ってるのかなんて僕には分からない。それはおそらく自分の他にこのバイトをしている人がいれば、その人達も同じだろう。  でも、それでも僕達は今日もこうやってSNSを監視し続けている。いつかこんな事をしなくてもよくなる平和な世界をつくる為に。
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