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「…だけどさ。五聖だけじゃなくて、
もう2チームくらい創れば良かったのにさ」
溜息交じりに、瑞玉は続けた。
「それだと、結束力に欠ける。
神はそうお考えなのでしょう。
ですから我々五聖のみにしたのでしょうね」
穏やかに答える産土。
「…なんだかよく分からんが…。
他の種族の者達とも
もっと交流して良いと思うぜ。
他の種族との色恋沙汰は、
禁じられてはいないんだから…」
と瑞玉は口を尖らせる。
「あーそうだな、確かにな。
だけど、俺達のどこにそんな時間があるよ?」
不意に、背後より男らしく張りのある声が響く。
「火焔!」
振り返った瑞玉は声の主の名を呼んだ。
「花香、水鏡…」
続いて姿を現した二聖に、産土がその名を呼ぶ。
「ま、仕方ないもんは仕方ないさ。
どうしようも無い事に不満を言うより、
可能な部分で楽しんだ方が
自分自身が、楽だぜ」
と火焔は瑞玉の頭を右手で軽くポンポン、
と叩いた。
「何だよぉ。すぐそうやって子供扱いしてさ!」
瑞玉は頬を膨らませる。
「おっ、可愛いぞ、その表情。子供みたいで」
火焔はからかう。
「何だよ!自分が一番背が高いからって!」
瑞玉は反撃を試みようと、右手の拳を繰り出す。
難なくかわす火焔。
彼らの小突きあい…いや、
じゃれ合いと言うべきだろう。
じゃれ合いが始まった。
そんな彼らを、笑みを浮かべて見守る
水鏡、花香、産土。
火焔と瑞玉。彼らのじゃれ合いは、
つつがなく仕事が捗っている証だった。
やがて、清らかで心地良い風が
彼らを包み込む。
それを合図に、火焔も瑞玉も天を見上げ、
五聖は互いに傍に集まった。
空には真珠のような月が浮かぶ。
花の精霊、木の精霊が、水の精霊達が蝶と
舞い始める。
小鳥や蜜蜂、リス等が生命の賛歌を歌う。
月の光が、その全てを優しく照らし出す。
まさに「花鳥風月」。そんな光景だった。
五聖は、その光景を眺めるのが好きだった。
天界の「花鳥風月」
それが見られる限り、宇宙は均衡を保てている。
その「証」でもあった。
自らの仕事が、滞りなく全う出来ている。
充実感を味わう瞬間だった。
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