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色鮮やかな緑の葉が生い茂り、その隙間より陽の光が優しく降り注ぐ。
その光は、柔らかく男の心もち日焼けした肌を優しく照らし出す。
艶やかな肌だ。淡いオレンジ色の漢裾、濃いオレンジ色の帯。
その色合いがよく似合っている。
高身長、鍛え抜かれた逞しい体つきである事が見て取れる。
男は大きな樫の木の枝に立ち、目を閉じて両手で印を結んでいた。
スーッと通った鼻筋、男らしく引き締まった形の良い唇。
形よく整えられた眉は、炎のような朱赤である。
同じく朱赤の長いまつげ。閉じられて尚一層、その長さが際立つ。
その瞳の色が気になるところだ。
肩の下あたりまで伸ばされた波打つ髪は色鮮やかな朱赤だ。
木漏れ日に照らされキラキラと輝く。
それはさながら、赤々と燃え盛る炎を思わせる。
やがて男は静かにその瞳を開けた。
その瞳は大きめで目尻がキュッと上がっている。
そしてどこまでも澄み切った鮮やかな赤だった。
白目とのコントラストが美しい。
情熱と優しさ、そして理性を併せ持つ深い朱の瞳。
木漏れ日の光を反射し、生き生きと輝く。
この男は五聖の内の一人。
火を司る火焔(かえん)であった。
火焔の役割は、生命を栄えさせるだけでなく、
そのものの生きる力、情熱を呼び覚まし、
自らが繁栄する意思の力をも司る。
かなりの広範囲にあたる為、宇宙全体の均衡を図る為には、
出来るだけ高い処で精神統一する必要があった。
彼のお気に入り場所は、天界一長老の樫の木だった。
いつもそこから、宇宙全体の均衡の様子を探り、
必要とあらば炎の力を与え、過剰であるなら力を吸い取り、
調節していた。
やがて彼は、何かの気配を察知し、木の下へと瞬間移動した。
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