第一話 花天月地

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色鮮やかな緑の葉が生い茂り、その隙間より陽の光が優しく降り注ぐ。 その光は、柔らかく男の心もち日焼けした肌を優しく照らし出す。 艶やかな肌だ。淡いオレンジ色の漢裾、濃いオレンジ色の帯。 その色合いがよく似合っている。 高身長、鍛え抜かれた逞しい体つきである事が見て取れる。 男は大きな樫の木の枝に立ち、目を閉じて両手で印を結んでいた。 スーッと通った鼻筋、男らしく引き締まった形の良い唇。 形よく整えられた眉は、炎のような朱赤である。 同じく朱赤の長いまつげ。閉じられて尚一層、その長さが際立つ。 その瞳の色が気になるところだ。 肩の下あたりまで伸ばされた波打つ髪は色鮮やかな朱赤だ。 木漏れ日に照らされキラキラと輝く。 それはさながら、赤々と燃え盛る炎を思わせる。 やがて男は静かにその瞳を開けた。 その瞳は大きめで目尻がキュッと上がっている。 そしてどこまでも澄み切った鮮やかな赤だった。 白目とのコントラストが美しい。 情熱と優しさ、そして理性を併せ持つ深い朱の瞳。 木漏れ日の光を反射し、生き生きと輝く。 この男は五聖の内の一人。 火を司る火焔(かえん)であった。 火焔の役割は、生命を栄えさせるだけでなく、 そのものの生きる力、情熱を呼び覚まし、 自らが繁栄する意思の力をも司る。 かなりの広範囲にあたる為、宇宙全体の均衡を図る為には、 出来るだけ高い処で精神統一する必要があった。 彼のお気に入り場所は、天界一長老の樫の木だった。 いつもそこから、宇宙全体の均衡の様子を探り、 必要とあらば炎の力を与え、過剰であるなら力を吸い取り、 調節していた。 やがて彼は、何かの気配を察知し、木の下へと瞬間移動した。
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