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ある日曜の午後、偶然立ち寄った中共学園の文化祭は、なんとも異様な雰囲気だった……。
「革命バンザーイ! 茂尾主席生徒会委員バンザーイ!」
校門には「文化大革命祭」と書かれた看板のかかるアーチが作られ、そんな高らかに叫ぶ声が、たくさんの来場者で賑わう校内のあちこちから聞こえている。
その声を上げているのは、私の知る中共学園の制服とはなぜか違う、戦中の国民服のようなモスグリーンの衣服に身を包む生徒達だ。
また、校内の壁という壁、掲示板やさらには窓にまで、彼らが称賛の声を上げる「茂尾拓斗」という主席生徒会委員(生徒会長とかじゃないのか?)の横顔を描いたポスターが貼られ、「造反有理」やら「学校大革命」やらというスローガンが赤いペンキで大きく落書きされている。
「……ん? なんだ?」
その特異な熱狂に包まれた敷地内で、一際、生徒達が黒山の人だかりを作っている場所があった。
校舎正面前に作られた特設ステージのような舞台だ。
近づいてみると、ステージの上には椅子が一つだけ置かれ、その椅子には白髪頭の初老男性がぐったりとした表情で座らされている。
スーツを着てはいるがジャケットは引き剥され、ネクタイも伸びてクシャクシャに曲がっている。
いや、それだけにはとどまらず、鶏ガラのように細い首からは「反革命分子」と書かれたプラカードが下げられ、どこから見ても明らかに見世物状態である。
「この封建主義教師めっ!」
「革命を邪魔する者は断固処分せよ!」
そんなみすぼらしい恰好の男性を取り囲むようにして、興奮した学生たちが手に手に赤い生徒手帳のようなものを掲げて暴言を浴びせているのだ。
おそるおそる、盗み見るようにその手帳の表紙に書かれた文字を見てみると、「茂尾拓斗語録」という文字を読み取ることができる。
尋常ならざるその光景に、私はとなりに立っていた一般客らしき中年男性に尋ねてみた。
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