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――その翌日の午前中。
特に寄るつもりもなかったのだが、用事でそちらの方へ行かねばならなかった私は、またしても中共学園の前を通りかかった。
しかし、一目見ただけで、昨日とはガラッと雰囲気の変わっていることがわかる。
あれだけ〝うるさく〟貼られていた茂尾主席委員のポスターが一枚残らず剥され、壁のあちこちに書かれていたペンキの落書きを、ジャージ姿の生徒達がちょうど洗い流しているところである。
また、昨日は皆一様に着ていたあのモスグリーンの制服だが、今日は誰一人として身に纏っている者はなく、ジャージの生徒以外は見慣れた中共学園のブレザー制服姿だ。
なんだか、ただ文化祭が終わったからというだけではないような感じだ……。
「ああ、さすがにやりすぎましたからね。〝文革祭〟を主導していた林平助や江尻青子達が補導されたんですよ。威力業務妨害だか器物破損だか、とにかくそんな罪いろいろで」
余りの変わりように、どうにも気になって生徒の一人を捕まえてみると、その純朴そうな男子生徒は他人事のようにそう答えた。
「ま、そもそもの茂尾主席委い…じゃなかった。もうそう呼ばなくていいんだったな……その茂尾もと会長自身は文革祭に関わってないって言い張ってるし、林や江尻達も口を噤んでるんですけどね。どう考えたって、あれは生徒会長辞めさせられた茂尾の個人的復讐ですよねえ」
男子生徒は私が再度尋ねるよりも早く、そんな説明を続けて口にする。
「でも、学校が普通に戻ってくれてよかったです。さすがに柳校長は体調崩してしばらくお休みらしいですけど、今はほら、あの紫苑頼三教頭先生を中心に、茂尾が生徒会を追い出した島正平先輩を新たな生徒会長に迎えて復興の真っ最中です」
そう言われて彼が指し示した方を覗うと、どこかで見たことのあるような中年男性が、その島だかいう新生徒会長らしき人物に指示を出して、まだ残っていた特設ステージの片づけ作業を進めている。
この学校に知り合いはいないはずだが、見憶えあるのも別段、不思議なことではない。あれは昨日、私に〝吊し上げ〟のことを教えてくれた、あの男性である。
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