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いつものように動画が流れる。
私好みの……
正確に言うと、妻の好みに合わせて私がよく選ぶ料理をチョイスしてくれている。
分かりやすく丁寧、そして簡単。
いつもと違ったのは、念入りに細かく刻む毒物らしき物。
手順が終わると最後にテロップが流れた。
【品物はお送りしました。
幸運を】
同時に玄関のチャイムが鳴る。
扉を開けると、
「お届け物です」
小さな小包を持った宅配業者。
「あ、ありがとう」
すぐにサインをして受け取り、逃げるように扉を閉めた。
「誰?」
目を擦りながら寝室から妻がノソノソと現れる。
「い、いや、あの……
新しい調味料があってさ、美味しそうだったから頼んだんだ」
引きつった笑顔で右手に持った小包を見せた。
「ふぅーん」
欠伸をしながら興味無さげに返事をする。
「お、お腹空いただろ?
早速作ろうか?」
お伺いを立ててみる。
「しのごの言わずに早く作れば」
重たそうな体で椅子に座り、テーブルの上に突っ伏して、まだ眠たそうな目を擦りながら携帯電話をいじり始めた。
「す、すぐ作るからちょっと待ってて」
レシピ動画を再生しながら、一つ一つ丁寧に材料を切っていく。
小包を静かに開けて、不自然な動きにならぬよう中身を取り出す。
小さな毒物を摘んで、
「こんな生活も今日までだ」
小さな独り言を呟いた。
「なんか言った?」
「い、いえ何も……
も、もう出来るからね」
動画と同じように、毒物を細かく切り刻んだ。
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