10/20
前へ
/20ページ
次へ
「──も、もう止めてくださいっ!」 って、なんで、こんなものまで上司に見られなきゃなんないのよ! 恥ずかしさにそう叫ぶと、奥さんは「ふんっ」と鼻を鳴らしてスマホを膝に落とした。 「ほら見てご覧! やっぱりこの女は不倫してっ」 「名前の詐称、ですかね」 課長のシンプルな言葉に、奥さんは押し黙ってしまった。 「どういった経緯でこういうことになったのかは知りませんが、ご主人が偽名を使われていた、というのは故意的に彼女を騙したと」 「そっ、そんなのこの女の嘘かもしれないでしょう?」 わなわなと震えながら叫ぶと奥さんに、課長は「ふむ」と腕を組んだ。 「ですが先程の写真のデコには『N&M、ラブラブ』なんて文字もありましたよね?」 「え?」と奥さんは、課長の言葉に慌ててまたスマホを取り出して確認し始めた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

456人が本棚に入れています
本棚に追加