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「すっ、すみませんでした! もう忘れてください! もう本当にっ」
がばっと頭を下げる奥さん、膝に置かれた手はもう震えてる……。
「えぇ、私が証人です。彼女に訴えさせるようなことはしませんから。よろしければ家までお送りしましょうか?」
証人って……。
大きくなっていく出来事に課長の顔を見ると、口は笑ってるのに目は笑ってなくて──。
「そっ、そんなっ、とんでもない! あのっ、私、ここで失礼します!」
言うのが早いか、車から飛び出るのが早いか、奥さんは慌てふためきながら車を降りて、もつれる足で去っていった。
なんか、本当に、なんだったの……?
「さて、穂積さん」
「──はいっ」
そうだった! まだ終わってない!
パム、と軽いドアの閉まる音に隣を見れば、課長は運転席に移動していた。
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