456人が本棚に入れています
本棚に追加
「穂積さんも乗りなさい」
「……」
あたしは今日をクビになる。
彼の冷たい視線に、それだけははっきりとわかった。
藤堂課長はあたしを助手席に座らせて、奥さんを後ろに、課長はその隣に座った。
「さて、順を追って話したいただけますか?」
「順番なんて知らないわよ。その女がっ」
「穂積さん、本当に彼女のご主人と付き合っていたのですか?」
イエスかノーか。
それしか答えられないのなら、イエスだ。あたしがコクリと頷くと、奥さんは「ほら見てご覧!」と大笑い。
「でもっ、結婚してるなんて知りませんでした!」
どうせクビになる。
それならと、あたしは声を振り絞った。
「先に誘ったのも向こうだし、ノブ君は家庭があるなんて一言も言わなかった! そんなの知ってたら──」
好きになんて、ならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!