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「……ノブ、君? あんた、誰のこと言ってるの?」 そんな小さなつぶやきに、後部座席を振り返るとノブ君の奥さんはキョトンとした顔であたしを見てた。 「誰って……、あなたのご主人で……」 「うちの主人は山田浩二よ……?」 「……はい?」 「……」 「……」 ……誰? 「なにか手違いがあったみたいですね。穂積さん、あなたが付き合っている男性の名前は?」 冷静過ぎる課長の声に、はたと我に返る。 「え? あ、石田伸明……、あっ! えと、ここに名刺もっ」 そう言いながらあたしは必死になって名刺を探した。 だってこれに彼が携帯の番号を書いて渡してくれたから、大事に財布に入れといたはず。 もう、ただの紙切れだけど、財布に入れておいたことも忘れてたけど。
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