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「それにしても、昨日まで気付かずすみませんでした」
「え? な、な……に?」
課長の口から謝罪なんて言われる理由が思い当たらず、顔を上げると課長はコクリとコーヒーを口に運ぶ。
コクリ、と動く喉仏が妙に生々しくて、「何がですか?」なんて質問も出来ない。
「東京では遅くまでJRも地下鉄も運行してますし、さらに遅くなると皆会社のチケットを貰ってタクシーで帰るのが普通でしたから。それに、男性営業は殆ど車で通勤でしたから、穂積さんの帰宅方法は完全に失念していました」
「そ、そんなっ、えと、遅くなっても帰れないとか無いですし、そもそも東京に比べれば全然田舎なんで危険なんてことは欠片もありませんから!」
「東京でも広島でも、夜道は危険ですよ」
「やっ、でも、あたしなんて襲うやつなんていませんって!」
「現に襲われてたじゃないですか」
「え? あっ! あれはっ──」
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