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「でも、それっていい上司さんよね?」 「え?」 「だって、真由ちゃんの弱みを握ってるのに変わらない態度なんて、なかなか出来ないわ。もしかして、真由ちゃんが思ってる以上に出来る上司さんなんじゃない?」 「仕事は出来るって前から言ってたじゃん?」 出来るからこそ、落ちこぼれの広島に来たって聞いたし。 「仕事だけじゃなくて、人間としてもって意味よ」 いつでもクールどころか氷点下で、冷酷なまでに部下を怒る課長さん。 だけど、その冷静沈着なお陰であたしはあの奥さんから助けてもらえた。 ううん、そもそも冷酷な性格ならあの時駆けつけてはくれない? いやいや、もとはパスワードを聞くためだ。 別にあたしを助けたかった訳じゃない。 でも、あんな修羅場に居合わせたいなんて、野次馬根性満載な人なんてくらい……。 「……良い人、かな?」 「真由ちゃんが気になったのかしら?」 「でもでも、部下の素行は上司の査定にも響くって!」 「黙ってれば誰にも分からないわよ?」 「……だよね」 「良かったわね、真由ちゃん」 「……うん」 多分、良い上司、のはずだ。 多分……。
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