956人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「いいから、それで帰りな?」
緒方課長はあたしの肩をぽんっと叩くと「藤堂ー、ちょい頼みあんだけどー」と課長に話し始める。
「……」
どうしよ。これ。
「気にすんな。俺らより遥かに給料貰ってんだし、有難く使っとけよ」
隣から東君までそう言うから──。
「あ、あのっ、お先に失礼します」
あたしはそのお金を握りしめて帰ることにした。
会社を出て福沢諭吉さんをじっと見つめる。
使って、いいんだよね?
夜遅くになるとバスの間隔も開いてなかなか来ない。
来ないんだけど……。
結局、あたしはそのお金を使わずに自分のお財布からタクシー代を出すことにした。
最初のコメントを投稿しよう!