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「いいから、それで帰りな?」 緒方課長はあたしの肩をぽんっと叩くと「藤堂ー、ちょい頼みあんだけどー」と課長に話し始める。 「……」 どうしよ。これ。 「気にすんな。俺らより遥かに給料貰ってんだし、有難く使っとけよ」 隣から東君までそう言うから──。 「あ、あのっ、お先に失礼します」 あたしはそのお金を握りしめて帰ることにした。 会社を出て福沢諭吉さんをじっと見つめる。 使って、いいんだよね? 夜遅くになるとバスの間隔も開いてなかなか来ない。 来ないんだけど……。 結局、あたしはそのお金を使わずに自分のお財布からタクシー代を出すことにした。
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