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そして、プレゼンの日。
あたしはいつもよりかっちりとした紺色のスーツ姿で出社した。
「いっぱしの営業のつもり? ただのアシのくせに」
梅田さんにすれ違いざまそう言われたけれど、聞こえてないふりをした。
「おぉ? 今日は七五三か?」
こんな東君の軽口に、少しほっとしてあたしは彼の頭を「えい」とど突いた。
「七五三にはちゃーんと着物着ました!」
「……なら、リクルート?」
「あ、ヘッドハンティングされたらどうしましょ?」
「勝手にハントされてくれ」
「なら、来週のこの資料は自分で作ってね」
「うお? 困る! お前がいないと俺は生きてけない! 頼むからハントされないで!」
「あー、のど乾いちゃった。美味しいミルクティが飲みたいなぁ」
「買うか、ボケ」
「あぁん?」
こんなくだらない話でも、あたしの緊張は少しずつほぐれていく。
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