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「緒方課長は藤堂課長の奥さんって見たことあるんですか?」 そして離れた席から聞こえてくる声にも、あたしの耳は敏感に反応した。 「ん? あー、まぁな。こいつ身内婚だったから俺が見たのは一度だけ」 「えー、どんな人なんですか?」 結婚してるのはわかってることなのに、こうして改めて肯定されると心が軋んでいく音がする。 「いや、どんなってなぁ……」 「もう止めましょう、この話題は。プライベートを侵食されるのは気分が良くないので」 藤堂課長の容赦ない言葉に、さっきまで盛り上がってた雰囲気が、一気に氷点下まで下がった。 そんな雰囲気に緒方課長が「ほら見ろ」と大きくため息をつく。
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