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お酒の力は偉大だ。 あたしは課長の腕に縋り付くようにして、ふらふらと歩いた。 だけど、課長はあたしの手を振り払ったりしない。 寧ろ腰に手を回してくれてあたしを支えたくれてる。 大きな手……。 じんわりと暖かさまで伝わってくる。 お店を出るとみんなばらばらで、気付けば課長と二人きり……。 「なかなか空車がいませんね。大きな通りまで歩きますよ」 「はぁい」 繁華街を抜けると少しだけ静かな通りになる。 人もまばらだけど、行き交う車だってまばらだ。 それでもタクシーは多分捕まる。 金曜の夜なんて稼ぎ時なんだから。 「あぁ、やっと来ました──」 タクシーに向けて上げられる手を、あたしは掴んだ。
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