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あぁ、終わったな。
このあと突き放されて冷たい視線を浴びせられて、冷たい言葉でフラレるだろう。
仕事も外されて、もしかしたら移動、最悪クビかなぁ……。
そっと、課長の手があたしの肩に触れる。
もう少しで、この恋が終わる。
なんて呆気ないんだろう?
「俺も、酔ってるんだ」
ーー俺?
え?
口調が違う? 誰? と思って顔を上げたけど、見えるのはやっぱり課長だ。
「冗談でした、じゃ済まされないぞ?」
「……本気、です」
この気持ちは冗談には程遠い。
だからそう答えたんだけど……、課長?
あたしの返事を聞くと、課長は右手を上げてタクシーを止めた。
それからあたしの手を握ったまま一緒にタクシーに乗り込む。
「どちらまで?」
タクシーに課長が告げた住所は、あたしの家とは真反対の方角だった。
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