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「だ、だって! 昨日の夜から何も食べてないしっ」 「そうでしたね。しかもうちの冷蔵庫にはビールくらいしかなかったでしょう?」 こちらに向かって歩いてくる課長は、いつもの課長だ。 「そんな人様の冷蔵庫を勝手になんて見ません! けど、緒方課長の言葉からきっと大したものは入ってないだろうなって思って、ケチャップまで買ってきました!」 そう言って、買ってきたばかりのケチャップを見せると、課長は「確かにないですね」と言って、あたしの手から荷物を取り上げた。 「で、鍵はポストに入れなくていいんですか?」 真っ直ぐにあたしを見下ろす課長の顔はもう笑ってない。 「──はい」 視線をそらさずにそう答えると、課長は一度目を伏せて、「そうですか」というとあたしに背を向けてリビングに歩き始めた。
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