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キッチンからは清々しいコーヒーの香り。
さすが課長、なのかドリップしてくれてるみたいだ。
入った瞬間からコーヒーは香ってたから、あたしが着替えてる間に豆を挽いたのかな?
ダイニングらしき場所にはまだダンボールが積んであって、そこにはテーブルも椅子もなかった。
「なかなか箱を開ける時間がないので」
「あ、すみません……」
不躾なあたしの視線に気づいたんだろう。
課長のそんな言葉に謝ると、目の前のローテーブルにコトリとマグカップが置かれた。
「あまり食器は用意してないので」
「そんなっ、全然いいです!」
「ミルクも砂糖もないのですが」
「だっ、大丈夫です!」
ブンブンと首をふるあたしに課長は「嘘つきですね」と言いながらスティックシュガーを出してくれた。
「何かのお返しだったと思います。だから砂糖はあるのですがミルクは──」
「砂糖があれば十分です!」
きっぱりとそう言うと課長はふっと笑って、一人用のソファに腰を下ろした。
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