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「穂積さん、サインが抜けてます。サインのない書類に一体どんな効力があると?」 「……すみません」 「それと、ここのインデントがズレてます。客先に提出する書類ですから体裁もちゃんと整えてください」 「すみません、直します」 こんな気分だと仕事だってミスが出てくる。 しかもあたしの上司はアキさん、ではなく藤堂課長で、冷たい視線であたしを見たあと、小さくため息までつかれてしまった。 「今日中に修正してください」 「はい……」 昨日のアキさんとは別人みたい。 ふと、課長の左手を見ると、あのリングがキラキラしていた。それが余計あたしを突き放してるように見えた。 ううん、多分突き放してるんだ。あたしが甘えてるから……。 なにやってるんだろう、あたし。
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