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「つきましたよ? 真由」
車がマンションな前に着いても、なかなか降りる気にはなれなくて子供みたいにうつむくあたし。
こんなことしても呆れられるだけなのに。
「まだ……」
二人のときは思いっきり甘やかせてくれるって言ったのに。
「アキさんが、足りないよ……」
泣いちゃダメ。
そんなの、重たい女だと思われちゃう。
カチリとシートベルトの外れる音がして顔を上げると、すぐそこにアキさんの顔があって、キスをくれた。
でも、すぐに離れてしまいそうになって、あたしは両手を伸ばしてアキさんを捕まえて、もっとキスをせがんだ。
ついばむようなキスから、大人のキスへ。
舌を伸ばして、お互いのそれを絡めてもっと深く繋がる。
「ダメな子だね」
チュッともう一度唇を重ねて、アキさんは離れてしまった。
「もっと……」
「ダメ。もう遅いから帰りなさい」
二人きりのときは甘やかせてくれるって言ったくせに。
「続きは明日の夜に」
耳元でそう囁かれて、あたしは背中がゾクッとした。
結局、木曜日はそれでお終い。まるでお預けを食らった犬みたい。
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