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「あ、変ですよね? あたしの家でもないのに『おかえり』なんて。えっと、お疲れ様です、ですよね?」 『おかえり』なんて、家族とか一緒に住んでる人のいう挨拶だ。 それをあたしが言ったから――。 「いえ、ただいま。真由」 そんな言葉と一緒に、アキさんの手があたしの頭をポンと撫でてくれる。 あたしはそれだけでうれしくて、彼の手をはにかみながら受け入れた。 「しかし意外でした」 スープを口にしながらのアキさんの言葉にあたしは「ん?」と首をかしげる。 「真由がこんなに料理が上手だなんて」 「そうですか? 結構なんでも作れちゃいますよ? 共稼ぎだったせいか中学くらいからやってたし」 「美味しいです」 「ホントに?」と聞けば、アキさんは口の端を上げてあたしの頭を撫でてくれる。 まるで子供の扱いなんだけど、それでも嬉しくて、あたしの顔は勝手に緩んでしまう。
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