607人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、変ですよね? あたしの家でもないのに『おかえり』なんて。えっと、お疲れ様です、ですよね?」
『おかえり』なんて、家族とか一緒に住んでる人のいう挨拶だ。
それをあたしが言ったから――。
「いえ、ただいま。真由」
そんな言葉と一緒に、アキさんの手があたしの頭をポンと撫でてくれる。
あたしはそれだけでうれしくて、彼の手をはにかみながら受け入れた。
「しかし意外でした」
スープを口にしながらのアキさんの言葉にあたしは「ん?」と首をかしげる。
「真由がこんなに料理が上手だなんて」
「そうですか? 結構なんでも作れちゃいますよ? 共稼ぎだったせいか中学くらいからやってたし」
「美味しいです」
「ホントに?」と聞けば、アキさんは口の端を上げてあたしの頭を撫でてくれる。
まるで子供の扱いなんだけど、それでも嬉しくて、あたしの顔は勝手に緩んでしまう。
最初のコメントを投稿しよう!