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「まいっか。穂積ちゃん、昨日の奴やってくんない? あー、勿論藤堂にはちゃーんと報告しておくから」 そう言われて断れるはずもなく、あたしは「はい」と答えた。 「そんじゃこれが資料で、これがうちのが途中まで作ってたファイル。今日は一日社に居るから質問あったらいつでも電話して」 緒方課長は大量の資料とテキトーな説明を終えると、「じゃ」とアイコスを手にしてうちの課を出ていった。 「この資料、目を通すだけで死にそ……」 なんてつぶやいても仕方ない。 それに藤堂課長も東君もいない今、あたしが時間を持て余してるのは事実だ。 昔なら『暇でラッキー』って思えたのに、仕事を与えられたほうが余計なことを考えなくていいから助かる、なんて……。 「馬鹿だなぁ……」 あたしは自嘲して、大量にある資料に手を伸ばした。
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