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あたしの視線が二人の間を行ったり来たりすると、藤堂課長は大きく息を吐いてあたしの腕をグイッと引き寄せた。 「少し話があります。いいですよね?」 そう聞いたのはあたしでなく緒方課長にで、緒方課長もあたしを見て「どうする?」なんて聞いてくる。 どうする? って聞かれても――。 「お願いします」 どう答えればいいか分からず動けないでいると、終業を告げるチャイムが鳴って、こんなことを言われたらあたしには「はい」という選択肢しか残ってなかった。 連れていかれたのは誰もいない会議室で、入るなり藤堂課長は鍵を閉めた。 「風邪は、治りましたか?」 「……はい、……あ、いいえ」 風邪じゃないからどう答えればいいのか。
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