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「ヨーク!!」
深夜の執務室に、宰相の大声が響いた。
ヨークはとてもよく働いた。
諸外国の近況に精通し、交渉術に長け、情報処理能力も高かった。
身分の高さは無くとも、外交官やファラオの個人秘書であった経歴から人脈もあった。
そのうえ毎日、深夜まで一人で資料をまとめている。
本当に、5日後には会議の資料が出来上がるかもしれない―――
北の宰相は、この出来過ぎた部下を持て余しそうになっていた。
「……どうしたんですか?こんな遅くに」
ヨークは驚いて資料から目を上げた。
先に帰宅したはずの宰相が、血相を変えて戻って来たのだ。
「ヨーク……!」
「ああ!差し入れですか?やっと労ってくれる気持ちになりました?」
宰相のただならぬ雰囲気に、ヨークはわざと間の抜けた対応をした。
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