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アクティーの部屋には、母娘が残った。
「ねえティアリ。これで良かったのかしら……」
「どうしたの?お母様」
「アフメスには平和に暮らしてほしいと思っていたのに……あの子を前にしたら、つい、ファラオになって欲しいだなんて言ってしまったの」
「仕方ないじゃない。今のエジプトは不安定だわ。このままではいつか強国に……」
「アフメスは、若い頃の父様にそっくりだったわ。こんなに立派になって……」
「そうよ。アフメスは父様の子ですもの。きっと大丈夫」
ティアリはいたわるようにアクティーを抱きしめた。
アフメスと神官は寝室の荷物をまとめている。
「荷物とかそんなに無いし。さ、もう行きましょう?」
アフメスが神官を促した。
「えぇ?アフメス殿は無いですけど、私には荷物が……あ、そうだアフメス殿。この荷物をまとめててくれませんか?私は少し用事があるので」
「えー!」
そう言って荷物を残し、神官は足早に部屋を後にした。
(いったい何の用事?……どこに行くんだろう?)
アフメスは見つからないように時間を置いて、こっそりと後を追うことにした。
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