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「自己紹介も済んだし、早速仕事の説明しようか。じゃあ野上さん、もう戻っていいよ、ありがと」
ああ、本当に新しくそして厄介そうな日々が始まるんだ。
割とあっさり出て行こうとする編集長の背中を恨めしく見つめ、聞こえぬようため息をつく。
すると編集長は、ドアを開ける寸前でくるっとこちらを向き直り、息を吸い込んだ。
「小見っ、頑張れよ!」
え・・
「東雲さん、こいつ、若いけど才能あるし、ホントにイイ子ですから!俺が太鼓判押すんだから間違いない、よろしくお願いします!」
うわ、何よ、最後にそういうことすんのやめてよ。
もう会えないわけじゃないし、何よりこんなとこに人を売った憎むべき相手なのに、胸が痛くなる。
馬鹿編集長・・と心の中で呟くと、東雲さんが深く頷き、私の頭の上に手のひらを乗せた。
「ちゃんと面倒見るから安心して」
「頼みます!」
「うん。あ、良い子紹介してくれたお礼に、来月号は未公開分も含めて渡すよ」
「お願いしまあああす!!」
さようなら、野上編集長。
あ、たっくさんお世話になったんだから、せめて階段の手前までは見送ってこようかな。
激励を込めて、思いっきり背中を押してあげたい。
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