1014人が本棚に入れています
本棚に追加
編集長が出て行き、これで私も完全に、この週刊アンダーハートの一員となってしまった。
東雲さんに促され、一つだけ何も物が置かれていない机に向かう。
すべすべで色も違うけど、私のために新しく用意したんだろうか。
嬉しいとも言い切れず、複雑な気分で荷物を振り分ける。
とりあえず最初に愛用のノートパソコンを取り出して設置すると、隣にいた今次さんがバッと覗き込んだ。
「画面何?子犬かあ~可愛いね、小雪ちゃんちの?」
「いえ、前に取材で寄ったお店にいた子です」
距離を詰められて咄嗟に身構えるも、今次さんは本当に子犬が可愛かったらしく「いいなあ。実家にもいるんだよ、でかいけど」とため息をついている。
「街角の取材してたんだっけ」
「そうですね、どちらかと言えば裏道メインで、昔ながらのお店を紹介したり」
「結構発見あるよねえ、俺も雑誌読んでたよ。面白かった。特に、お年寄りの夫婦がやってる店の特集あったじゃん?あれ好きだなあ」
チャラいな、と印象付けたことを謝りたいほど、今次さんは純粋な目で伝えてきた。
嘘みたい、路地裏読んでてくれたんだ。しかも、それって私が担当した特集じゃん。
素直に嬉しく、少し身体を向けて「ありがとうございます」と告げる。
目が合うと、今次さんは明るい声で自分の方へと指を向けた。
「俺も取材が主なんだ。自分の記事は、写真も俺が撮ってるんだよっ」
「写真も?すごいですね、じゃあ・・」
「セクシー女優さんのキワドイカットは全部俺の産物だから、要チェックしてね!」
他では見れない代物ばっかだよ!と満面の笑みで言われ、かち合っていた視線を再び逸らすことにした。
「今次はイケメンだから、お願いしなくても向こうから脱いでくれるんだってね」
「へへー、まあ役得でいろいろ見せてもらってますぅ」
東雲さんの言葉に、もはや自分がイケメンだとわかっている体で応え、ウインクまでしている。
最初のコメントを投稿しよう!