ep.1

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編集長が出て行き、これで私も完全に、この週刊アンダーハートの一員となってしまった。 東雲さんに促され、一つだけ何も物が置かれていない机に向かう。 すべすべで色も違うけど、私のために新しく用意したんだろうか。 嬉しいとも言い切れず、複雑な気分で荷物を振り分ける。 とりあえず最初に愛用のノートパソコンを取り出して設置すると、隣にいた今次さんがバッと覗き込んだ。 「画面何?子犬かあ~可愛いね、小雪ちゃんちの?」 「いえ、前に取材で寄ったお店にいた子です」 距離を詰められて咄嗟に身構えるも、今次さんは本当に子犬が可愛かったらしく「いいなあ。実家にもいるんだよ、でかいけど」とため息をついている。 「街角の取材してたんだっけ」 「そうですね、どちらかと言えば裏道メインで、昔ながらのお店を紹介したり」 「結構発見あるよねえ、俺も雑誌読んでたよ。面白かった。特に、お年寄りの夫婦がやってる店の特集あったじゃん?あれ好きだなあ」 チャラいな、と印象付けたことを謝りたいほど、今次さんは純粋な目で伝えてきた。 嘘みたい、路地裏読んでてくれたんだ。しかも、それって私が担当した特集じゃん。 素直に嬉しく、少し身体を向けて「ありがとうございます」と告げる。 目が合うと、今次さんは明るい声で自分の方へと指を向けた。 「俺も取材が主なんだ。自分の記事は、写真も俺が撮ってるんだよっ」 「写真も?すごいですね、じゃあ・・」 「セクシー女優さんのキワドイカットは全部俺の産物だから、要チェックしてね!」 他では見れない代物ばっかだよ!と満面の笑みで言われ、かち合っていた視線を再び逸らすことにした。 「今次はイケメンだから、お願いしなくても向こうから脱いでくれるんだってね」 「へへー、まあ役得でいろいろ見せてもらってますぅ」 東雲さんの言葉に、もはや自分がイケメンだとわかっている体で応え、ウインクまでしている。
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