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「女性も楽しめる、その、動画とか」
「今更。今月だって特集組んでる」
「そうそう、しかも女子のがSMチックなキツイの好きな傾向ありっぽい、甘酸っぱい動画が好みな時代は終わったのかもねぇ・・」
勝手に終わらせないでよ!中には少女漫画のような甘優しい行為を夢見てる子もいるかもしれないじゃん!
このままじゃ強引に押し通されそうで、本気で恐怖を感じたその時、東雲さんが目を細めながらとんでもないことを口にした。
「小見さんさ、処女?」
たとえばここがお酒の席で、東雲さんもぐでぐでに酔ってたとしたら――
「は、あ?」
セクハラですよ、って睨みつけたり、無礼講だということで叩くくらいはできる。
でも東雲さんは、あくまで仕事を背景に、素面の顔で聞いている。
軽い口調の中に、なんとなく凄みを感じた気がして、仕方なく首を振った。
「なら快感の意義わかるでしょ?玩具っていうのはただ面白がって使うだけじゃなく、トレーニングにもなるんだ」
「トレーニング?」
「上手くイケない子が、彼氏のために一人で身体を開発するって言う健気な意見もくるんだよ。そう言うの聞くとこっちも応援したくなるじゃん!」
これまたキラキラした笑顔で今次さんがガッツポーズをとる。
ハラハラと窺っていた梶浦さんも小さく頷いていて、この人たちがエロ目的だけじゃなく本当に読者の望むものを送り出しているのも、わかる。
わかるけど、じゃあ私も、とやる気をみなぎらせることは出来ない。
「・・今次さん、女優さんと会うなら、その方たちにお願いできないんですか」
「グッズのメーカーによってはAV制作会社と提携してるからさー、ホントは気持ちよくなくても演技しちゃうじゃん?だから素人の子が良いんだ~」
「だったらモニター募集するとか・・」
ことごとくもっともな理由で却下され続けたその時、バシン、と鈍い音が響き渡った。
痺れるようなそれに皆が動きを止める中、真野さんが机に手のひらを押し当て、私を睨んでいた。
「そんなに嫌なのかよ」
「あ・・当たり前じゃないですか!なんでこんなことに、私が身体張らなきゃいけないんですか!?」
あまりの理不尽さに、真野さんが机を叩いたのよりもさらに大きな声で言い返した。
その発言が、私たちにとってあるまじきものだと知りながら。
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