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この童謡は昔からこの地域で『山彦さん』は葬式で亡くなった者に対して案内をする者として本来は拝められていた。案内する際に迷わないようにするために歌われていた童謡だった。しかし最近では『山彦さん』を拝めるための墓やお地蔵さんを荒らす者が若者を中心としてたくさん現れるようになった。そのため、この地域の偉い人が迷子の時や子供をなだめるためにその歌を歌って大切さを知らせようという行いをした。しかしそれでも気を落ち着かない『山彦さん』は最近になって出現すると言われていた。そしてどうやら誰かを探しているらしい。私は迷信としてそれを鵜呑みにせず、そのままスルーして生活していたのだ。しかし私と真逆で親友の華奈は興味津々だった。ちなみに代子というのは老若男女関係なく死人のことをこの地域では表すらしい。
「私、山彦さんと付き合ってみたいなぁ」
「はぁ?華奈、いるわけないでしょ?何言ってんのよ」
「偉い人たちに怒られるよ」
私はいないことを信じていた。
しかし……。
学校のチャイムが鳴り、廊下から教室に向けて女性が入ってきた。女性は生徒の顔を見て、首を傾げて一人の生徒に聞く。
「藤田さん。どうしたのですか?何を見てるのです?」
名前を呼ばれた男子学生が黒板を見つめている。窓際にいるため、まっすぐ見ると先生を見ていない。彼は呟いた。
「山彦さん……」
彼の口からその名前が出た。先生は彼の机に両手を力強く叩きつけて言う。
「バカなこと言わないで。藤田さん、みんなを怖がらせる気でしょ?山彦さんはいない……わよ」
「先生、山彦さんに怒られたね」
先生はカニ歩きで黒板と並行して歩く。何やら怪しい。
先ほどの彼は笑っている。そんなに笑わない彼なのに。そして先生が教卓に戻ると彼は気を失って椅子から横に転げ落ちた。
「誰か彼を保健室に……連れて……ハァハァ……あげて」
やたら息が荒い。そして彼女はその場に倒れ込んだ。教卓の周りで血の海が少しずつ広がる。そして彼女の背中にこの教室にない物が刺さっていた。
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