恋に向いてない

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「何言ってんだよ。サークルの半分以上の女子食ってるくせに。あいつら、朝青竜と同じ扱いされたってのが気に食わないんだよ」 「勇気を出して告白してくれたんだから、一回寝るぐらい別にいいだろ」  緊張しすぎて青い顔をしている彼女は、震える声で好きだと言ってくれた。気持ちには応えられないが、ひとつだけならお礼に何か願いを叶えると言ったのは一紀の方だ。 「だからってあのデブの処女もらってやるなんて、お前アタマおかしいよ」  場が一斉に湧く。同じく笑ってはいても、女子は揃ってバカ笑いした。息が出来ぬほど笑い転げる姿は、具体的な暴言よりも冷酷な侮蔑を感じた。  唯一笑っていないのは当事者の一紀と、生真面目な石津(いしづ)だけだ。  女子たちを侍らせるように真ん中に座っている石津は、一紀の所属するテニスサークルでは珍しく医学部の男だ。他にもテニスサークルはある上、医学部内にだってあるのにわざわざここを選ぶなんて少し変わっている。石津は特別男前というわけではないが、医学部という属性と見上げるほどの長身、そして何より誠実な性格が好評で、一紀の次に人気がある。  もっとも朝青竜と一戦を交えた今では、彼女たちの人気ランキングから一紀は圏外に急落し、石津が独走のようだ。     
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